研究室インタビュー

“ちょっと変わった形”の設計手法を考える
東海大学
|野村圭介研究室
野村圭介講師
進路に迷う高校生の頃、テレビ特集でアントニオ・ガウディのサグラダ・ファミリアを目にした野村圭介講師。「着工してから完成まで100年以上。ガウディや建設に関わった多くの人たちは完成を目にすることはできないけれど、建築は続いていく。こうやって歴史をつなぐのが建築というものなのか」と衝撃を受けた。建築への興味はそれ以来だが、入学当初は意匠設計を希望しながらも、いまひとつ意欲的に打ち込めない大学生活を送っていた。そんな時、諸岡繁洋教授のシェル構造の研究と出会う。「平らな板を少しずつ曲げながら留めるとシェルの形になります。その過程と成り立ちがとても面白かった」。解析計算や物理的思考にも魅力を感じ、それが転機となって、以降、構造設計を専門とするようになる。

野村圭介講師
博士(工学)
(のむらけいすけ)
1986年 長野県生まれ
2009年 東海大学工学部建築学科卒業
2011年 同大学院工学研究科建築土木工学専攻修士課程修了
2013年 同大学院総合理工学研究科総合理工学専攻博士課程修了
2013年 株式会社中田捷夫研究室
2016年 東海大学工学部建築学科助教
2020年 同工学部建築学科講師
“ちょっと変わった形のもの”の構造計算
大学院時代に主に取り組んでいたのは非矩形形状スラブの設計。「実際の建物では床スラブが台形やちょっと変わった形、非矩形になることが多々ありますが、そのような形に対して基準が無く、対象の非矩形スラブより大きな矩形スラブを仮定した設計式が用いられます。しかし、実際の形を無理やり四角形に置き換えるので、そこには過剰に複雑な構造評価や無駄が生じるのではないかと考えました」と野村講師は研究のきっかけを振り返る。そこから、「簡便で精度が高く、形状の影響が明確に表された、非矩形形状スラブのシンプルな設計式が必要」と考え、そのような設計式の提案を目的とした研究を続けた。

構造設計の実務経験を経て
大学院在籍中は、当時、東海大学木造分野をけん引していた杉本洋文研究室にも出入りし、平塚の海岸に建つビーチハウスの設計施工に携わったり、構造計算を任されたりした。その縁もあり、大学院終了後に就職した中田捷夫研究室では杉本教授の設計した、奈良県五條市総合体育館の構造設計を担当している。
中田研究室は木造、中でも巨大木造空間の構造設計にたけた設計事務所で、主に体育館や公共施設、教育施設などを手がけている。野村講師が担当した、五條市総合体育館もその一つで、別名" シダーアリーナ" の名前の通り、奈良県の地元産杉が多用されている。「日本の杉は構造材として使うには強度が足りないという弱点があるので、地元産杉を使って大空間を作りたいという命題に答えるためにいろいろな苦労がありました。結果的に鉄骨と木造のハイブリッド、屋根に奈良県産杉の集成材を組み合わせ、壁との接合部と梁の一部に鉄骨を取り入れて補強することで、縦横の幅50m の大開放空間をなんとか実現させました。中田研究室に在籍した2 年半の間は、ちょっと変わった形や複雑な構造の解析計算を任されることが多かったです。大学院で異形、変形構造物の解析に取り組んでいた点を評価していただいたのかもしれません」


五條市総合体育館とそのモックアップ


実験の様子
力の流れを意識して、複雑なことをシンプルに伝える
現在研究室で進行中の研究も大元のテーマには「変わった形の構造計算の手法を確立すること」がある。既存の方法にとらわれ、整形の建物しか構造設計できないことで生じるデザインの制約を外し、ちょっと変わった形の建物も設計しやすくすること。そのために、形が変わることで力の流れ方にどのような影響があるのか、結果がどれくらい変わるのか、傾向を分析解析して式に落とし込み、実験と数値解析の両面からアプローチしている。
また、昨今の自然災害による被害によってセンセーショナルに報道された、切り土、盛り土の問題にも以前から取り組んできた。「地盤調査会社からの委託を受けて盛り土の不同沈下を防ぐための指標を作る取り組みをしています。具体的には、土の詰め方を変えた小さな模擬人工地盤を用いて、土の詰まり具合と沈下の関係性を調べたり、土壌調査の方法について研究したりしています」さらに、野村講
さらに、野村講師は構造設計家としても活躍中だ。「非常勤講師でいらしている、森屋隆洋先生が設計された山安ターンパイク店(2020年竣工)の構造設計を担当しました。主体構造は鉄骨で、それを補完する木造の巨大な柱が薄い屋根を支える構造です。変形が均一になるように柱を微調整し、意匠と構造がうまくリンクした建物になっていると思います」。ここでは、野村研究室の学生も図面の描画や構造計算の一部を担当し、実際の構造設計の手順を間近に感じられる好機となった。
非矩形スラブ解析例ゼミの様子構造設計のヒントは日常にもちりばめられている。「全てのものには力が流れています。日々の生活の中で変わった形のものがあったら、そこにどういう力が流れてそのものが支えられているか意識してみると、構造はより身近でシンプルなものになると思います。複雑なこともシンプルにまとめることで相手に伝わりやすくなります。学生の間は効率だけを求めるのではなく、今目の前にある学びを素直に受け止め、将来的に自分の得意分野で活躍するというビジョンを持って過ごしてほしいと思います」。



研究室メンバーに聞きました
[ 質問項目 ]
①野村研究室を選んだきっかけ
②野村先生の魅力
③自身の研究テーマ
-
渡邉駿太さん わたなべ・しゅんた 修士2年
①シェルの研究で実際に模型をつくって研究していた。
②学生の目線に近い。
③平板とボルトからなる曲面構造 -
内村颯汰さん うちむら・そうた 学部4年
①学びたい分野の研究をしている。
②学生の自主性を重んじながら、分からないことを聞くと一緒に解決策を考えてくれる。
③水抜き穴の形状による排水性能の差異 -
大島翔さん おおしま・かける 学部4年
①野村先生の若さに驚いた。自分が得意な建築構造系の研究室だと知り、迷わず選んだ。
②研究で悩むと一緒に考え、的確なアドバイスをしてくれる。
③圧縮試験供試体の寸法効果
-
小林ももさん こばやし・もも 学部4年
①構造の勉強に興味があった。
②説明がわかりやすい。
③締め固め度と沈下量の関係 -
小林涼太さん こばやし・りょうた 学部4年
①授業の中で構造系が一番楽しく、野村先生の授業が一番分かりやすかった。
②分からないことを質問すると詳しく教えてくれる。
③圧縮試験供試体の寸法効果 -
坂本智之さん さかもと・ともゆき 学部4年
①授業が分かりやすかった。実際の構造設計を勉強したかった。
②研究に対し、丁寧な指導、的確なアドバイスをしてくれる。
③地盤の締め固め度と沈下量の関係 -
出口直瑛さん でぐち・なおあき 学部4年
①構造系研究室の中で一番興味を持った。
②適切なアドバイスをしてくれる。ソフトに詳しく勉強になる。
③形状拘束効果がせん断剛性・耐力に及ぼす影響 -
樋口光さん ひぐち・ひかる 学部4年
①先輩の卒業研究テーマに興味を持った。
②研究につまずいた時、優しく丁寧にアドバイスしてくれる。
③目標形状から推定する製作模型との誤差が少ない分割形状の決定 -
森大地さん もり・だいち 学部4年
①構造設計に興味があった。
②研究に対し、さまざまな角度からアドバイスしてくれる。
③目標形状から推定する製作模型との誤差が少ない分割形状の決定 -
柳村康貴さん やなぎむら・こうき 学部4年
①構造系研究室の中で、研究内容に一番興味を持った。
②教え方の丁寧さ。分からない問題・課題を一緒に考えてくれる。
③目標形状から推定する製作模型との誤差が少ない分割形状の決定 -
吉田彩さん よしだ・さや 学部4年
①研究内容や相性が自分にあっていた。
②自分から動けばしっかり応えてくれる。
③水抜き穴の形状による排水性能の差異
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