研究室インタビュー

東北工業大学工学部建築学科 齋藤隆太郎研究室のサムネイル

“実学”としての建築計画とデザインを重視

東北工業大学

齋藤隆太郎研究室

齋藤隆太郎 講師

「建築は総合学問であり、かつ社会 的および芸術的側面に実をなす、非常 に多角的な視点からアプローチが可能 な実学。反面、日常生活はもちろん、 人間の身体と密接に関わり合うことか ら、計画や設計がpoor だったり、そ の扱い方を間違えると取り返しがつか なくなることもある。審美眼を持ちなが らも、建築を通じて社会に対する責任 を意識することが、建築という分野を 楽しむ初歩となる」と語るのは齋藤隆 太郎講師。東京理科大学大学院工学 研究科建築学専攻修了後、大手ゼネ コンの竹中工務店設計部で腕を磨いた 後、2014年に独立してDOG一級建築 士事務所を主宰しながら、東北工大に 新しい風を吹き込むべく2022年度から建築デザインや建築計画、都市計画、地域計画、歴史・意匠などの分野を受け持っている。

齋藤隆太郎 講師

齋藤隆太郎 講師

(さいとう りゅうたろう)

1984年1 月10日 東京都生まれ
2006年 東京理科大学工学部建築学科卒業
2008年  東京理科大学大学院工学研究科建築学専攻修了
2008年~14年 竹中工務店設計部
2014年 DOG一級建築士事務所
2021年  東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士後期課程修了 博士(工学)
2021年~22年  東京大学大学院工学系研究科建築学専攻特任研究員
2022年 東北工業大学建築学部建築学科講師
2022年  東京大学大学院工学系研究科建築学専攻客員研究員)

建物の計画を紐解き得られた知見をフィードバック

齋藤研究室が最も重視するのは「実学としての建築計画とデザイン」。つまり、構想→計画→設計→施工→管理・運営といった一連の建築ワークフローを念頭に置き、主に構想~設計までの初期フェーズにおいてより豊かな建築空間創出のために、建築計画的視点から多角的に課題を抽出し、問題提起、提案、解決へと導くためのさまざまな研究および実践を展開中だ。
齋藤講師曰く「実学とは最終的に建物に 何かしら寄与する」こと。ただ、「昨今の 建築教育は座学、悪くいえば机上の空論的 な面の否めず、実学の方向を目指した教育 かどうか」と疑問に思うことも。齋藤講師 の研究分野である建築計画学は古典的な 扱いを受けることも多い中で、作られた建 物の計画を紐解いて、どのように使われて いるか、などを法的側面も含めて調査し、 そこから得られた知見を、どのようにフィー ドバックするかを常に意識しているという。 例えば、「世界的にも著名な建築家である ガウディのことを研究し、その建築を日本 で展開しようとしても余り意味がないので はないか。やはり、その場所や地域の実学 に結びついた研究を実践していくことが大 事ではないか」との持論を持っている。
設計事務所の立ち上げと同時に大学院 に入り直し、再度アカデミックな研究に挑 戦した。というのも「学術と実学は切り離 せない。実学を経験したからこそ、研究の 視野を広げることができた」と話す。学術 と実学の両方に軸足を置き、どちらも俯 ふ 瞰かん しながら常にアップデート。そこで得た情報や知見を日々、学生たちに提供するよう心がけている。

使う側に寄り添い常に“make full use of ~” で

現在、研究室のメンバー8 人には、常に「make full use of ~」を心がけるよう求める。使うだけでなく、使い果たす、使いこなすこと。建てて終わりではなく「どんな人がどう使いこなすか、味わい深く使いこなすかが重要で、そのことを想定して作られるべき」と強調。独りよがりになるので はなく、「使う人の気持ち、使っているとき のことを想像して空間を設計すること、設 計者側に立脚しない建築の見方を醸成して ほしい」と語り、学生たちにも、「建築行 為の前提条件、つまり建築計画の段階で のつくり込みを積み重ねることで、使い果 たされる“make full use of ~ ”な、より良 い建築を世に送り出すことができる」とア ドバイスする。これも大手ゼネコンでの経 験や自身が率いる設計事務所での仕事を 通じて、常に“ 使う側”に寄り添うことを目指してきたからだ。
また、大学に入った当初は個人個人にな りがちだが、研究室配属になって初めてユニッ トができ、学生にとっても居場所ができる。 つまり、個人戦から共同戦線になることも 学ぶことになる。「建物は設計者1 人で作 るのではない。いろんな人が関わってでき ていく。ビルダー、工務店にもわかりやす い図面を書くなど、常に施主を含めて相手 がいる」としながら「チームで建物を作って いくことを研究室という単位の中で学ぶこ とが大事。当然、卒業論文・設計は個人 戦だが、そこに至るまでのプロセスはチー ム戦。みんなで議論することが、個々のレ ベルアップにもつながる」と強調する。

論理的思考で人に伝える力を涵養

東北工大の講師として学生たちの指導に精力を傾けるとともに、主宰する設計事務所でもさまざまコンペ、プロポーザルに挑戦するなど「毎日がフル稼働の状態」。ただ、こうした“二刀流”も齋藤研究室では大いにプラスとなっている。大学での理論だけでなく、実際に建物が建つまでのプロセスを教育材料として学生に示すことができる点は一日の長といえよう。加えて「機能性を担保しないと建物として成り立たないなど建築に対する作り込みもゼネコンで学んだ。あたりまえの素地をあたりまえに提供できるほか、建築を巡る法規制などの新しい情報も取り入れて学生にフィードバックできる」と語る。
最後に齋藤講師は、生意気かもしれないと断った上で「頭が良くなりたい人は齋藤研究室にこい」とメッセージを送る。そ の真意を問うと「研究室では、デザインに 関する引き出しも提供しますが、物事を正 しく読み解き、論理的思考で構築して人に わかりやすく伝える能力が身につくことを何 より大事にしている」と教えてくれた。
これを示す良い事例がある。2022年12 月、島根県美郷町が進めていた若者定住 住宅「みさと。サスティナブルハウス ―自 然の恵みと暮らす家―」のプロポーザルで、 DOG一級建築士事務所と齋藤研究室が 取り組んだ提案が最優秀者に選定された。 案では恵まれた自然環境のサステナブルハ ウスと住宅群としてシェアする配置計画が 評価され今後、町と協議しながらさらにブ ラッシュアップされる予定だが、学生のころ から実社会で必要な“伝える力”を涵養でき るのも、齋藤研究室の大きな魅力だろう。 (写真は、いずれも齋藤講師が携わった作品)

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研究室メンバーに聞きました

[ 質問項目 ]

1 研究室を選んだ理由
2 研究室(もしくは先生)のよいところ(魅力)
3 自身の設計/研究のテーマ
4 10年後の自分(理想)

  • 会田 翔太 さん 学部3年

    会田 翔太 さん 学部3年

    1) 別の科目との重複などのことについてわかりやすく対応してくれた。知識をもっと深めたい
    2) 研究室を選んだ学生のためになるゼミを考えてくれている

  • 秋葉 美緒 さん 学部3年

    秋葉 美緒 さん 学部3年

    1) 研究と実践を行き来して、構想から設計まで柔軟に成長できると思ったから
    2) パワフルな先生、将来の進路や設計課題でのモチベーションが近い研究室

  • 大槻 真太朗 さん 学部3年

    大槻 真太朗 さん 学部3年

    1) 都市計画について深く学びたいと思ったのと、プロポーザル等にも積極的に参加したいと思ったから
    2) 建築に対し意欲的なメンバーが多く、議論し合い切磋琢磨し合あえる環境が良いところだと感じています

  • 北澤 将門 さん 学部3 年

    北澤 将門 さん 学部3 年

    1) 建築分野の中でも特に設計に興味を持ったから
    3) 少子化など社会問題に対応する建築物について

  • 菊田 光隆 さん 学部3 年

    菊田 光隆 さん 学部3 年

    1) 設計に力を入れていたから
    2) 個々の意見を尊重するところ

  • 高畑 翔 さん 学部3 年

    高畑 翔 さん 学部3 年

    1) 自分の目指している就職先に勤めていた経験があった
    3) 時間を建築に落とし込む

  • 永窪 輝斗 さん 学部3 年

    永窪 輝斗 さん 学部3 年

    1) 一番実務に近く、コンペを含む設計に対して、様々な観点からアドバイスがもらえると思ったから
    3) 人が集まる要素(特に光)

  • 山内 悠一斗 さん 学部3 年

    山内 悠一斗 さん 学部3 年

    1) 建築をさまざまな視点で見て考えを深めていくことで設計を突き詰めたいと思ったから。
    2) 先生の建築に対する熱量が高く、自分自身も影響されてやる気になれるところ

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