研究室インタビュー

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新しい発想で自然と融和した美しいデザインを

名古屋造形大学

空間作法領域溝口周子研究室

溝口周子 教授

 

溝口周子 教授

溝口周子 教授

 

(みぞぐち しゅうこ)

京都工芸繊維大学住環境学科卒業。
(株)日建設計グループ 日建スペースデザイン入社。25年に亘り、ホテル、病院、オフィス等のインテリア設計に携わる。
2015年より、+wow design associates主宰、名古屋造形大学専任教員。
現在空間作法領域教授

自然と建築が融和したデザイン

「自然と建築を融和して考える」ことが溝口教授のポリシーだ。専門は建築ではなくインテリアだが、自然と建築は一体で考えられるものだと捉え、建物の外にも空間の場ができることを意識してデザインを行う。大学の授業では、インテリアの店舗設計であってもランドスケープに気を配り、自然とその空間との親和性を考えてデザインをするよう学生に伝える。名古屋造形大学では工房と密接につながった実技授業が多く行われる点が特徴だ。学生は入学してすぐ、小さな木の食器から始まり、金物彫金工房でフォークやスプーンを、陶芸工房では陶器のカップを製作する。一般的な工学部で建築を学ぶ場合とは違って、実際に手を動かしてものをデザインする機会が多いのは芸術大学ならでは。木に関しても、椅子やベンチをつくるなど課題を通して普段から木に馴染んでいるという。「学生には大学での多くの製作経験を活かして、いろいろな活動に参加してほしい」と溝口教授は話す。2021年には岐阜県八百津町の林業従事者や工務店と共同で「八百津町の木材を使って小さな家をつくろう」というテーマでプロジェクトを立ち上げた。学生と八百津町の大工さんや製材所の方々が一緒になって取り組んだ本プロジェクトでは、デザインを行う前に森での伐採から運搬、製材に至るまでの流れを現地で視察した。「いきなり木が角材であるわけじゃなくて、森から木が伐り出されて角材になる過程を実際に目の前で見て体験させていただきました。そうして出来上がった角材を使って私たちはデザインをする、という一連の学びを得る貴重な機会でしたし、プロジェクトの中で流通や価格、輸入材の問題といった日本の林業の課題についてもお話を聞き、とても貴重な経験を学生とともに私もさせていただきました」と語る溝口教授は、「来年以降も日本の木を守っていくために、木に関するプロジェクトをやっていきたいです。いろいろな機会があれば参加したいなと思っています」と木材の利用に意欲的だ。

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2・3 豊田地域医療センターはインテリアプランニングアワードで優秀賞を受賞

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4 岐阜県八百津町のプロジェクトでは伐採の現場にも立ち会った / 5 伐採された木材が集まる森の市場を見学 / 6 現地の大工さんから説明をいただいた

発想の新しさとデザインの美しさがポイント

今回審査員としてコンテストに参加した溝口教授は「やっぱり毎回すごく面白いアイデアが出ているので、刺激を受けます。私たち自身も自分の作品で木を使う時の参考になりました」と話す。溝口教授にとって一番の評価のポイントは、木の新しい使い方をしているかどうか。細かなディテールの善し悪しや構造的な部分は後で多少フォローできるとして、まずはアイデアの発想力に重きを置いた。その次に注目するのはデザインの美しさだ。「発想が良くてもデザインが美しくないものは商品としても売れないですし、評価のポイントとしては低くなる」と話す。「美しいというのも人それぞれバラバラなので難しい基準だとは思います。でも、黄金比というものが存在するように、やっぱり世界中の人間が美しいと思う共通のバランスがある。新しい発想といろいろなバランスの組み合わせが全体として整っていることによって、皆さんが共通して美しいと感じる基準になってくる。多くの人が美しいと思うものは何かということはものを評価する際のひとつの基準であると思うんですね。やっぱり工学的なことの前に、美しくなければものとして成り立たないと考えていて、常々学生にもデザインの美しさまで意識するよう教えています」と語る。

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7 製材の作業も見せてもらう

小さな部品ひとつの寸法感覚から建築は始まる

ものづくりとは、基本的には立体をつくることだ。
「建築もひとつの立体ですので、ディテールも含めて実際につくることを考えなくてはいけない。そういう意味で、実際につくるという体験を学生のときに何かひとつはした方がいいと思います」と溝口教授。建築というとすごく大きなものをイメージしがちだが、建築も結局はいろいろな立体の組み合わせでできているという。建築を分解していくと家具になり、さらに家具の中には雑貨、といったようにいろいろな生活の道具に分解されるが、それらすべては立体だ。「そんなふうに立体を細かく分解していった小さなひとつの単位を実際に自分の手でつくってみることから、まずは小さなツマミひとつの寸法感覚から始まると思うんです。すごく小さなディテールから寸法感覚を学生に身につけてもらうためには、やっぱり自分の手で何かをつくる作業はとても大切な経験です。自分でつくったもののサイズ感が、次はもう少し大きな椅子になり、次はもう少し大きなスペースか大きなものになっていく。そして最終的には建築になる。その一連の建築をつくることと、小さな道具をつくることは、ものづくりとして感覚はそんなに変わらないことだと思っています」と、どんな建築も立体であるという意味で、小さな部品ひとつを自分の手でつくる経験がいずれ大きな建築の設計にも通じると述べた。また、溝口教授は自由な発想で木の新しい使い方を模索することに意味を見出す。「やっぱり木の利用方法って普通に考えると木造住宅や家具、家具の構造材とかしか考えられないんですけど、それでもそこに少しアイデアが加わると、こんなことにも使えるんじゃないかというように新しい木の使い方を学生なりの若い発想で考えてもらいたいですね。そのためにも、学生たちにはやっぱり木を、特に日本の木を使うことを考える機会に参加してほしいです」木の新しい活用法を考えるにあたって、普段の大学の授業だけではなく他大学の先生や社会に出ている方の意見をいただく機会は貴重だ。「今回のコンテストでは一般市民の方の目に触れる場所で発表できるということで、広く市民の方々の意見を聞くことができます。そういう意味でこういうコンテストに参加する意味がある」と話す。社会で人々に長く使われるものづくりを目指すうえで、今回のコンテストのような機会に積極的に参加する意義は大きい。

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8 八百津町の住民の方とのワークショップ 

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9 豊田地域医療センターで行った和紙制作のワークショップ

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